2010年04月30日

計算の時代 (2)?

フーコーは、16世紀の知の方法論を『言葉と物』の第2章冒頭、P42で次のよ
うにまとめている。
 『十六世紀末までの西欧文化においては、類似というものが知を構築する役
  割を演じてきた。テクストの釈義や解釈の大半を方向づけていたのも類似
  なら、象徴のはたらきを組織化し、目に見える物の認識を可能にし、それ
  らを表象する技術の指針となっていたのもやはり類似である。世界はそれ
  自身のまわりに巻きついていた。大地は空を写し、人の顔が星に反映し、
  草はその茎のなかに人間に役だつ秘密を宿していた。絵画は空間の模倣で
  あった。そして表象はー祝祭であるにせよ知であるにせよーつねに何もの
  かの模写にほかならなかった。』

しかし17世紀になって知の方法が変様する。
ちょっと長くなるが、フーコーは『言葉と物』の第3章を通じて次のようにま
とめている。
 『十七世紀初頭、ことの当非はべつとしてバロックと呼ばれる時代に、思考
  は類似関係の領域で活動するのをやめる。相似はもはや知の形式ではなく、
  むしろ錯誤の機会であり、混同の生じる不分明な地域の検討を怠るとき人
  が身をさらす危険なのだ。』

 『知の基本的経験かつ本源的形態としての類似をしりぞけ、類似のうちに、
  同一性と相違性、計量と秩序の用語で分析すべき雑然たる混合物を摘発す
  る、古典主義時代の思考なのだ。デカルトは、類似を忌避するといっても、
  合理的思考から比較という行為を排除しようというのでも、それを制限し
  ようというのでもなく、逆に、それを普遍化し、そうすることをつうじて、
  それにもっとも純粋な形態をあたえようとする。』

 『長いこと知の基本的範疇ー認識の形式であるとともに内容ーだった類似者
  が、同一性と相違性の用語でおこなわれる分析によって分離されたのだ。
  そのうえ、計量の媒介をへた間接的な仕方であれ、いわば同一平面上での
  直接的仕方であれ、比較は、もはや世界がいかに秩序づけられているかを
  あきらかにする役割を演ずるのではない。それは、思考の秩序にしたがっ
  ておこなわれ、単純なものから複雑なものへと赴くのである。このことに
  よって、西欧文化の《エピステーメー》全体は、その基本的配置において
  変様する。とりわけ、十六世紀の人々がまださまざまな近縁関係、類似関
  係、類縁関係を認め、そこで言語と物とが際限なく交錯しあっていたあの
  経験的領域ーあの広大な場全体が新たな布置をとろうとしているのだ。望
  らなら、この布置を「合理主義」の名で呼んでもよかろう。』

17世紀までは、類似している物事を分類し、まとめる事が知の方法だった。
しかし17世紀に成るとそこに数学的な方法と厳密化が加わり、抽象化して行く。
そこでは事物そのものではなく、事物をその構成要素に一度分割、抽象化して
計量可能にし分析する。そしてその分析の後に各要素を結合して、元々の事物
を再構成する事で、ある事物を把握した事を示す方法へと移行して行く。つま
りは科学的手法とその始まりである。

デカルトは『方法序説』の第2部、P29-P30で、自身の思考方法について4つ
の原則をまとめているが、その内の2つが以下である。
 『第二は、私の研究しようとする学問のおのおのを、できうるかぎり多くの、
  そうして、それらのものをよりよく解決するために求められるかぎり細か
  な、小部分に分割すること。
  第三は、私の思案を順序に従ってみちびくこと、知るに最も単純で、最も
  容易であるものからはじめて、最も複雑なものの認識へまで少しずつ、だ
  んだんと登りゆき、なお、それ自体としては互いになんの順序も無い対象
  のあいだに順序を仮定しながら。』

16世紀には異端とされた数学的方法が17世紀以降、科学的手法への応用を伴っ
て主流と成って行く。
デカルトは解析幾何学、ライプニッツは微分法(ニュートンもだが)、パスカル
は「パスカルの定理」や確率論、この時代の哲学者はみな数学者でもある。

デカルト:1596年〜1650年
パスカル:1623年〜1662年
ライプニッツ:1646年〜1716年
posted by 浅谷龍彦 at 00:08| 千葉 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 思索(自由) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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